このページでは、【概念の集合】という考え方について、解説していきます。
概念の集合は、あらゆる分野・テーマにおいて問題解決に役立つ強力な方法論(アプローチ)として活用できる考え方です。
以下では、その基本的な考え方やイメージ、応用方法をご紹介させていただきます。
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概念の集合とは何か?
概念、あるいは概念の集合とは、いったい何でしょうか。
これは少し抽象的ではありますが、実は私たちにとって非常に身近なものでもあります。
人間は、生まれてから大人になるまでの過程で、様々な概念を獲得・形成・蓄積していきます。そしてこれらの概念は、脳内で相互に結び付き、ネットワークを形成します。
人間は、こうした多様な概念のネットワークを用いて、考えることをします。
これは、私たち人間が持つ概念の集合(概念空間)として捉えることができます。
※以下は、後に少し触れますが、この概念の集合の一つの事例です。
概念の集合の事例
問題、問い、解、メタ、抽象、具体、前提、帰結、根拠、結論、場合、条件、分岐、パターン、観点、焦点、像、定義、分類、包摂、配置、分離、接続、分割、統合、全体、部分、構造、体系、要素、集合、順序、推移、変化、過程、変換、置換、識別、判断、評価、決定、解釈、認識、自覚、懐疑、明晰、不明瞭、明確、曖昧、十全、比較、対照、類推、推論(帰納、演繹など)、量的(単数、複数など)、質的、関係性(同等、類似、相違)、可能性(必然、偶然、蓋然)、仮定、仮説、理論、証明、論証、問題解決(現状、目標、計画、設計、戦略)、曲線、収束、発散etc…
このように様々な概念の集合(概念のグループ、概念のコレクション)を用いて、私たちは「思考すること」をしています。
このように哲学的な集合を考えるのは、理由があります。
概念は、人間の思考プロセスに影響を及ぼす最大の要因(ファクター)です。
そして、この概念は、我々が直面する問題が解決に至るか否かを左右する決定的な要素でもあります。
私たち人間は、生きている限り問題に直面することを避けられません。
※以下は、この世界に存在する問題の事例のリストです。
個人レベル、集団レベル、社会レベルの各水準で私たちが直面しうる問題の例を挙げています。
問題の事例
(人生・生き方の問題、心理的な問題、学習面の問題、身体や健康の問題、仕事やビジネスの問題、人間関係やコミュニケーションの問題、家族関係の問題etc…)
(理念・ミッションの問題、経営マネジメントの問題、売上とコストの問題、生産性&効率性の問題、市場競争とマーケティングの問題、リーダーシップの問題、意思決定とプロジェクト管理の問題、イノベーションの問題、認知とブランディングの問題、モチベーションの問題、コンプライアンスの問題、etc…
宇宙には無限に問題が存在するので、上記のリストはごく一部に過ぎないのですが、こうした問題に直面したとき、
概念によって、問題解決ができるか否かが決まってしまうのです。
概念の集合という哲学的なアイディアは、
概念が問題解決のプロセスにおいて果たすこの重要な役割に着目したうえで、
さらに問題解決に役立つ強力な理論&思考ツールとして発展させた新しい考え方です。
※この考え方を理論化・体系化したのが後述の【概念空間論】です。
以下では、概念の集合の①具体的なイメージ、②基本的な扱い方、③概念の集合を応用する方法などを解説していきます。
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概念の集合のイメージ
概念の集合というのは、かなり抽象的でイメージがしにくいものだと思うので、まず視覚的なイメージをご紹介したいと思います。
以下は、概念の集合の具体的なイメージ図です。
◆概念の集合のイメージ
この2枚の画像には、大量のキューブ(立方体)が描かれていますよね。
この個々のキューブは、人間が持つ様々な概念を表現しているとお考え下さい。
このように複数の概念(キューブ)をグループ化したのが概念の集合です。
これは私のお気に入りの図で、概念の集合という言葉から想像するイメージと完全に一致しています。
※概念の集合は、後述する通り、概念空間として解釈することができます。
以下では、このようなイメージを持ちながらお読み頂けたらと思います。
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概念の集合の事例
先ほど、一つだけ概念の集合の事例を挙げましたが、幾つかほかの事例もご紹介したいと思います。
一般的な概念の集合
概念の集合として、最もわかりやすいのは一般的な概念の集まりです。
概念の集合の事例
人間、動物、神、三角形、自然数、円柱、善悪、机、鉛筆、りんごetc…
これは日常生活の中でよく使う普通の概念を、概念の集合としてまとめたものです。
私たちは、思考、読書、勉強、会話などのシーンでこれらの言葉を使うことがありますよね。
このように、任意の概念を集めてグループ化したものを、概念の集合と考えます。
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学問の概念の集合
次に、様々な学問で使用される概念の集合を考えてみます。
あらゆる学問は、複数の基礎的な概念と、その概念同士の結びつきからできています。
学問にとって、概念は不可欠なものです。
概念をもたない学問というのは存在しないし、想像することもできないでしょう。
例えば、哲学という分野の概念を複数集めると、次のような概念の集合を構築することができます。
事例①哲学的な概念の集合
存在/無、実体、形相/質料、イデア、魂、神、コギト、方法的懐疑、神=自然、モナド、充足理由率、実存、エポケー、脱構築、アポリア、主観/客観、無知の知、力への意志、持続、差異、反復etc…
こうした概念の集合は、もちろん他の学問分野でも考えることができます。
次の事例は、論理学的な概念の集合です。
事例②論理学的な概念の集合
(前提、帰結、推論、命題、真偽、肯定/否定、演算、真理値、論理式、帰納/演繹法、逆、裏、対偶、仮定、同値、包含、矛盾、誤謬、論理関数、量化子、命題変数etc…)
以下は、生物学的、あるいは生理学的な事例です。
事例③生物学的、または生理学的な概念の集合
(細胞、組織、臓器、系統、ホルモン、神経伝達、心拍数、呼吸、血圧、体温、代謝、エネルギー、酸素供給、栄養素、ATP、筋肉収縮、神経系、内分泌系、循環系、消化系、etc…)
※これらは個別の学問分野に含まれる概念から構成された概念の集合(概念空間)ですが、もっと範囲を広げ、あらゆる学問の概念をまとめて概念の集合を考えることもできます。
このように、任意の学問的な概念の集合、というものを考えることが可能です。
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補足;概念が表現しうるもの
ここで次のような疑問を持つ方もいると思います。
概念の集合とは、結局、いったい何を表現しているのか?
これまでの集合の事例を見て、ただの「言葉のリスト」ではないのだろうか、と感じるかもしれません。
数学において考えられるような集合とは全く異なるような、哲学的な集合を考えることに、どのような意味があるのでしょうか。
これには明快な答えを提示することができます。
概念の集合とは、「概念によって表現しうるものの集合」でもあります。
先ほどお伝えした通り、
概念は、人間の思考プロセスに影響を及ぼす最大の要因(ファクター)です。
その概念は、実に様々な機能や働きを持っています。
概念は、例えば、次のようなものを表します。
概念 = 観点、焦点、像、考え方、方法論、枠組みetc…
(パースペクティヴ、フォーカス、イメージ、アイディア、アプローチ、パラダイムetc…)
人間の思考プロセス、あるいは問題解決のシーンにおいて、概念は、
物事について眺めるときの特定の観点、焦点、像など(パースペクティヴ、フォーカス、イメージetc…)を表したり、
物事について思考し理解するうえでの考え方、方法論、枠組みなど(アイディア、アプローチ、モデル、パラダイムetc…)になるのです。
概念の集合をこのように解釈することで、応用の可能性が一気に広がります。
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例えば、概念は、物事についての考え方を表現することができるため、
概念の集合=考え方の集合と解釈して、使うことが可能です。
先ほど、このような概念の集合の事例を挙げました。
概念の集合の事例
問題、問い、解、メタ、抽象、具体、前提、帰結、根拠、結論、場合、条件、分岐、パターン、観点、焦点、像、定義、分類、包摂、配置、分離、接続、分割、統合、全体、部分、構造、体系、要素、集合、順序、推移、変化、過程、変換、置換、識別、判断、評価、決定、解釈、認識、自覚、懐疑、明晰、不明瞭、明確、曖昧、十全、比較、対照、類推、推論(帰納、演繹など)、量的(単数、複数など)、質的、関係性(同等、類似、相違)、可能性(必然、偶然、蓋然)、仮定、仮説、理論、証明、論証、問題解決(現状、目標、計画、設計、戦略)、曲線、収束、発散etc…
これは概念の集合であると同時に、物事についての考え方の集合でもあります。
こうした概念の集合を、考え方の集合と解釈したうえで、問題解決に取り組んだらどうなるでしょうか。
ただ漠然と目の前の問題に取り組むより、ずっと問題を解決できる可能性が上がることにお気付きになると思います。
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「概念の集合」は、「概念によって表現しうるものの集合」と解釈できます。
例えば、概念の集合=観点の集合(パースペクティヴの集合)と解釈すれば、
概念の集合によって、物事を多角的な視点から捉えることができるようになります。
※例えば、これは認知バイアスの解消方法として使用できます。
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また例えば、概念の集合=理論、方法論、枠組みの集合と解釈すれば、
新しい理論の構築、新しいアプローチの開発、新しいパラダイムの生成に役立ちます。
これは、例えば、新しい学問の理論や、未知の問題への解決策を創造できることを意味します。
※この応用方法は、後述する参照平面、概念空間論、未概念法といった考え方で体系化しています。
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「無限に多様な概念の集合」を考えよう
ここまでの記述で、概念の集合という考え方がもつ可能性が少しずつ明らかになったと思います。
私が概念の集合という考え方を大事にしているのは、あらゆる問題解決のシーンで極めて強力な思考ツールとして活用できるからです。
概念の集合を実際に使用して考えるときのポイントについて、少し触れておきたいと思います。
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概念の集合を問題解決に応用して考えるときは、基本的に「無限に多様な概念の集合」を想定します。
そして、この無限に多様な概念の集合を、大きく2つのグループに分類します。
無限に多様な概念の集合➡分類
①既知の概念の集合
②未知の概念の集合
①既知の概念の集合は、既に自分の手元に揃っている概念のグループです。
もちろんこのグループも重要なのですが、問題解決のシーンでは、これだけでは十分ではないケースがあります。
問題解決のプロセスでは、基本的に、適切な概念が不足している状態だと、その問題を解決することができなくなります。
こちらの図をご覧ください。
無限に多様な概念の集合
既知の概念の集合
問題、問い、解、メタ、抽象、具体、前提、帰結、根拠、結論、場合、条件、分岐、パターン、観点、焦点、像、定義、分類、包摂、配置、分離、接続、分割、統合、全体、部分、構造、体系、要素、集合、順序、推移、変化、過程、変換、置換、識別、判断、評価、決定、解釈、認識、自覚、懐疑、明晰、不明瞭、明確、曖昧、十全、比較、対照、類推、推論、帰納、演繹、量的、単数、複数、質的、一様、多様、関係性(同等、類似、相違)、可能性(必然、偶然、蓋然)、仮定、仮説、理論、証明、論証、解決、現状、目標、計画、設計、戦略、曲線、収束、発散etc…
未知の概念の集合
(概念の不足状態)
この図には、無限に多様な概念の集合のなかで、①既知の概念の集合と②未知の概念の集合の両方のグループが描かれていますが、
②未知の概念の集合のほうには、何も概念が含まれていません。
もし仮に、現在我々が直面している問題を解決できていないならば、この②未知の概念のグループのエリアに含まれる概念が不足していることを意味します。
それゆえ、②未知の概念の集合を想定することが重要になります。
未知の概念の集合は、新しい認識(気付き、学び、発見、洞察など)を与えてくれます。
新しい概念を獲得すると、新しい認識が得られ、問題を解決できるようになるのです。
これまでの話を図式的にまとめると、次のように整理することができます。
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無限に多様な概念の集合を考える➡2グループに分類
①既知の概念の集合➡問題解決ができない(ケースがある)
②未知の概念の集合➡問題解決ができる
したがって、問題を解決するには、
①既知の概念の集合を活用して問題を整理しながら、
②未知の概念の集合を創造する必要がある。
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この考え方をまとめると、問題解決に役立つ極めて強力な理論&方法論を構築することができます。
実際に、概念の集合という考え方を用いて問題解決を行うときの大まかな流れを、こちらの記事でご紹介しています。
またこちらの記事で、概念の集合の応用方法をご紹介しています。
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※補足:集合という言葉について
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最後に
私は、概念の集合という哲学的な考え方を、あらゆる問題解決シーンにおいて有効な新しいアプローチとして広めたいと考えています。
もしご興味持っていただけたら、この記事をシェアしていただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※ご質問、ご感想などあれば気軽にコメント下さい。
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