■枠組みの集合と複数の枠組み間の変遷
■枠組みと枠組み化
■枠組みの集合
本書の主要なテーマは、複数の枠組み間を自由に移行・切り替え・変遷していくことである。次のように複数の枠組みのグループがあるとしよう。【枠組みa、枠組みb、枠組みc、枠組みd、枠組みe…】
このような複数の枠組み間の移行や切り替えは、次のように書き表すことができる。
複数枠組み間の遷移:枠組みα→枠組みβ
このような複数の枠組み間を自在に変遷していくには、幾つかの条件がある。
①既知の枠組みαについて。思い込みを自覚し疑い外すこと。既知の枠組みを解体すること。
②未知の枠組みβについて。新しい枠組みを構築すること。未知の枠組みを再編成すること。
③
あいだを自在に移行することは、極めて困難なことだと言える。
・既知の枠組みから未知の枠組みへの移行・変遷
・問題解決プロセスでは、必要不可欠
・認識の変化、これは認識構造の解体&再編成によって、大きな認識の変容が起こる
しかし、それゆえに複数の枠組み間を移行することには、比類のない意義・価値がある。
■枠組みの分類――親和性
ここで枠組みを分類するため、新しい用語――親和性――を導入しておきたい。親和性とは、モナド的観点としての人間にとって、特定の枠組みが適合的であるかどうかを表す性質である。親和性には、高い/低いという二つの極があると考えてみよう。すると、ある認識主体S(特定の人物)が、ある特定の枠組みに接するとき、大きく2つの反応パターンが考えられる。
①親和性の高いパターン
認識主体Sは、特定の枠組みを受容する。この枠組みはK領域に遷移すると溶け込み、思考・認識・問題解決プロセスを規定し影響を及ぼす。
②親和性が低いパターン
認識主体Sは、特定の枠組みを拒絶する。この枠組みはK領域に遷移しても溶け込まず、①のパターンの枠組みとは反対の仕方で思考・認識・問題解決プロセスを規定し影響を及ぼす。
※親和性という用語は、枠組みを分類するために導入した、便宜的なものに過ぎない。
ここで親和性とは、どのように形成されるか、どのような仕組みがあるかは、問わない。
本書の目的は、複数の枠組み間の移行・切り替えのための体系・思考方法を提示することにある。
特定の認識主体にとっての枠組みとの親和性の詳細や仕組みの解明は、割愛する。
個体的な資質、価値観、学習や経験、バックボーン、帰属する共同体による影響など、
ここで二種類の枠組みAとBがあるとしよう。枠組みAは、Sにとって過去にK領域に溶け込んだ親和性の高いものであり、枠組みBは、Sにとって新しいが親和性が低いもので、しかも枠組みAとBは同時には両立できないものだと考えてみよう。
※もちろんこれはモデルに基づく新しい洞察を得るための仮定・実験であり、分かりやすい状況を想定したものなので、実際には既知の枠組みだからといって親和性が高いとは限らないし、未知の枠組みだから親和性が低いとも限らない。また当然ながら既知と未知の枠組みが反発せずに融和することもあるだろう。
まずこのケースにおける状況を整理すると、次のようになる。
ある認識主体Sにとって、既知の枠組みは過去に獲得されたものなので、それを構成する諸概念のグループの遷移度/明瞭度はある程度高い水準にあると考えられる。反対に、未知の枠組みはまだ獲得されていないので、それを構成する概念のグループの遷移度/明瞭度は相対的に低い水準にある。つまり、既知と未知の枠組みにおいて、遷移度/明瞭度は対照的な関係性にある。

このとき思い込みは、大きく分けて次のような二つの経路・パターンで作用すると考えられる。
順強化――既知の枠組みにおいて、思い込みは、自身の信念に合致する知識・情報に対して肯定的・受容的に働き、その枠組みをを強化するように機能する。さらに、ここでは暗黙的な枠組みへの確信を深めるような認識の変化が起こる。(確証バイアス的)
反強化――未知の枠組みに対して、思い込みは、自身の信念に反する知識・情報に対して排他的に働き、新しい枠組みを否定的・拒絶的(抵抗、不信など)するように機能する。そして、このとき認識の変容は起こらない。未知の枠組みを拒絶するとき、反動的に、既知の枠組みの正しさへの確信はさらに深いものになる(保守性バイアス的)
このように、思い込みは、親和性の高い枠組み/低い枠組みに対して異なる仕方で機能し、認識に二重の支配を及ぼすのである。
また第一の線分上において、このような概念量の変遷は、新しい枠組みの形成、あるいは複数の枠組み間のダイナミズム(融和、反発、統合、移行…)を伴うものでもある。
第三の線分では、新しい出来事が認識のなかで生起することによって、動点がシフトしていく。ただし、この認識という出来事は、量的なものに還元しえないから、これは便宜的な表現として理解してほしい。
ある認識主体が、新しい概念を獲得していくと、何が起きるだろうか?遷移度/明瞭度の機構を通じて、この過程を辿り確認してみよう。
このときある認識主体Sにとって、親和性の高い枠組みは、自然にSのK領域に溶け込み、広い意味で思考や認識の枠組みとして無意識的に活用されるだろう。ところが、親和性の低い枠組みは、SにとってのK領域に侵入するとしても完全に溶け込むことはなく、むしろ抵抗・反発を感じるまとまりとして意識されるだろう。
また実践的な思考の次元において、あるいは問題解決のプロセスにおいても、思い込みは複数の枠組み間の変遷を束縛するのである。
認識の変容は、第二の線分である遷移度/明瞭度の高まりに応じて、新しい出来事として生起してくる。ところが、Sにとって親和性が高い枠組みと低い枠組みが関わるとき、引き起こされる認識の変容は、まったく異なる感覚を伴うだろう。
この線分上の変化には、隠れた因子としての思い込みによる働きによって、しばしば強い抵抗が起こる。この抵抗すらも乗り越えられ、ある閾値を超えるとき、この遷移度/明瞭度の変化は、認識主体に新しい体験を齎すことになる。
過去に形成された因習的な認識の構成・構造はしばしば強い抵抗を示す。しかし、ある閾値を超えると、この旧い構造を維持していた概念同士の結び付きは組み替えられ、全体は瓦解し始めることになる。新しい関係性によって、暗がりの領域に光が照射され、隠れた因子としての思い込みは覆されることになる。こうして認識の変容が起こるのである。
これはポジティヴな側面を見ると、K領域を安定化させ、様々な認識が関わるプロセス全般に貢献すると考えられる。また、この思い込みや信念を伴う諸概念のグループは、思考プロセスにおいて運用できる思考の枠組みを形成するのである。そして、ここで重要な分岐が起こる。この認識主体Sにとって、思い込みや信念を伴う思考の枠組みは、何らかの意味や理由から親和性の程度(高い~低い)を考えられるだろう。

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