こんにちは、馬渕です。
今回は、概念空間のイメージと、幾つかの種類をご紹介したいと思います。
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「概念空間」と「概念の集合」の違い
概念空間論は、概念の集合(概念のグループ)を体系的に扱うための考え方です。
概念の集合とは、人間が物事について「思考するプロセス」「問題解決のプロセス」などにおいて使用している、言葉のグループのことだとイメージしてみて下さい。
例えば、こちらは概念の集合の事例の一つです。
概念の集合の事例
人間、動物、神、三角形、自然数、円柱、善悪、机、鉛筆、りんごetc…
これは日常生活の中でよく使う普通の概念を、概念の集合としてまとめたものです。
私たちは、思考、読書、勉強、会話などのシーンでこれらの言葉を使うことがありますよね。
概念の集合として、最もわかりやすいのはこうした一般的な概念の集まりです。
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概念の集合を、概念空間と呼ぶこともあります。
この両者は、正直なところ、特に明確な区別はありません。
どちらで読んで頂いてもOKです。
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私の感覚的な話になってしまうのですが、
概念の集合(グループ)を考えるとき、その要素に焦点を当てるより、全体としての働きを意識するときは、概念空間と呼ぶことが多いです。
いわばマクロ的な側面に焦点を当てるときは、概念空間として扱うということですね。
全体的な統一体として概念空間と解釈するメリットとして、特にそのダイナミズムが見えやすくなることが挙げられます。
この点については、後述します。
一方で、概念の集合(グループ)を考えるとき、その要素にしっかりと焦点を当てたいときもあり、この場合は、概念の集合と呼ぶことが多いです。
いわばミクロ的な側面に焦点を当てるときは、概念の集合と呼称するいうことですね。
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以下では、特にマクロ的な全体、統一体としての概念空間について少しお話したいと思います。
概念空間というのは、抽象的で少しイメージがしにくいと思います。
そのため、まず定義の確認をし、またイメージを共有したあと、概念空間の幾つかの種類について、確認をしていきます。
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概念空間とは何か?
■【概念空間】の定義
【概念空間】とは、我々人間が持つ無数の概念が浮遊する空間のことを意味します。
さらに具体的に定義すると、概念空間とは、概念の集合から構成される空間である、ということができます。
例えば、これは概念空間の事例です。
概念空間(概念の集合)
人間、動物、神、三角形、自然数、円柱、善悪、机、鉛筆、りんごetc…
概念空間内では、このように諸々の概念が、相互に関係性を結びつつ浮遊しているものと考えます。
■【概念空間】の定義
【概念空間】とは、概念の集合のこと、あるいは無数の概念が相互に関係性を結びつつ浮遊する理念的な空間である。
※概念空間を想定する手順
素朴な概念空間を想定する手順は、以下の通りです。
これは「概念の集合」と明確に指摘しない場合の概念空間のイメージです。
■0.空虚な空間
まず、無限に広がりを持つが何もない空虚な空間があると想定する。
■1.概念の浮遊
次に、この空間に一つの概念が現れ、浮遊しているところを考える。
■2.他なる概念
さらに、この概念と関連する無数の概念が現れ浮遊する空間を考える。
■3.概念同士の関係性
最後に、これらの概念同士が相互に何らかの関係性をもって結びついている状態を考える。
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哲学の空間、哲学的な集合とは?
この点については、特にわざわざ声高に強調しようとは思わないのですが、
この概念の集合(=概念空間)という代物を、私は哲学的な集合と解釈しています。
数学と異なり、「数の集合」のような量的なものに限らず、ありとあらゆる概念(言葉や考え方、観点などを含む)からなる集合だからです。
以下は、哲学的な集合としての、概念空間の事例です。
概念の集合の事例;抽象概念の集合
問題、問い、解、メタ、抽象、具体、前提、帰結、根拠、結論、場合、条件、分岐、パターン、観点、焦点、像、定義、分類、包摂、配置、分離、接続、分割、統合、全体、部分、構造、体系、要素、集合、順序、推移、変化、過程、変換、置換、識別、判断、評価、決定、解釈、認識、自覚、懐疑、明晰、不明瞭、明確、曖昧、十全、比較、対照、類推、推論(帰納、演繹など)、量的(単数、複数など)、質的、関係性(同等、類似、相違)、可能性(必然、偶然、蓋然)、仮定、仮説、理論、証明、論証、問題解決(現状、目標、計画、設計、戦略)、曲線、収束、発散etc…
このような哲学的な空間は、数学の空間にも劣らず、なかなか「面白いもの」だと思いませんか?
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概念空間のイメージ
次に、概念空間の視覚的なイメージを共有したいと思います。
もしかすると、概念空間をさらに身近に感じていただけるかもしれません。
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概念空間の種類とは?
概念空間には、次のように幾つかの種類が考えられます。
■0.抽象的な概念空間
第一に、一般化または抽象的された概念空間を挙げられます。
特に断りなく概念空間といった場合は、この一般化されたモデルとしての概念空間のことを指しているとお考え下さい。
もう少し具体的な概念空間について触れる場合、私は
「私たちのプライベートな概念空間」とか「学問的な概念空間」という風に書いたり話すようにしています。
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■1.個人の持つ私的な概念空間
次に、私たち人間の、個人レベルでの概念空間というものが考えられます。
人間はこの世界に生れ落ち、幼児から大人になる過程で、様々な概念を形成・獲得・蓄積していきますが、
これらの概念群から構成される概念空間を考えられますよね。
これはプライベート(私的)でパーソナル(人称に帰属される)な概念空間です。
各人がどのような概念群を持つかは、例えば、
その人が受けた教育/価値観/学習の興味の範囲などにより大きく左右されるものであるため、かなり個人差があると言えます。
※もちろん、共通して保有する概念も多くあります。
例えば、哲学の研究者は、一般の人より多く哲学の概念を保持しているし、物理学の学者は物理概念について他の人々より精通しているでしょう。
このように考えると、「個々人の異なる概念空間」というものを想定することには大きな意義があるのではないかと思います。
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■2.人類にとっての概念空間
さらに広い捉え方では、人類がこれまでの歴史的なプロセスのなかで作り出した諸々の概念からなる概念空間も考えられます。
人類の概念空間の中では、あらゆる概念が生成・消滅を繰り返しているものと考えることができます。
これを私は、概念空間のダイナミズムと呼んでいます。
モデル的な意味での概念空間(概念の集合)は、静的な空間としても考えられるのですが、
こうした具体的な概念空間は、ダイナミックな特性を持つ動的な空間として考えると、非常に面白いと思います。
例えば、ある時代まで支配的な地位にあった概念でも、他のより包括的で有用な概念が登場することで淘汰されることがある、という具合です。
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■3.宇宙に実在する概念の空間
宇宙空間に、諸々の概念が集まっている物理的に実在する空間があるとすれば、それは概念空間と呼ぶことができます。
※例えば、数学者の中には、プラトンが唱えたイデアのように、図形(三角形など)や数字の概念が、宇宙空間に実在すると信じている人がいるそうです。
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西洋哲学の歴史を概念空間のダイナミズムで捉える
概念空間には、静的な空間としても考えらるし、動的な空間としても考えられます。
特に概念空間のダイナミズムという考え方は、学問の歴史などを考えるときに重宝します。
例えば、西洋哲学の歴史などは、概念空間の動的な変遷の連続として捉えることができます。
西洋哲学史について、この視点から解説した動画を作成したので、ぜひご覧下さい。
最後に
概念空間の考え方は、非常に幅広い応用範囲を持っています。
少しでも、興味を持っていただけたら嬉しいです。
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